市來健吾の日記

プログラマ、(元)物理屋(ナノテク、流体)

夜、ふと思い立ってダンボールの中に入っていた家で一番重たい本を引っ張り出して来る。


  • その本とは Lars Onsager の論文集。 これは(前にも書いたかもしれないけど)98年の春先だったかな、 tucsonに訪ねた gregory eyink (彼は今は JHU に居る)の影響で、 その後手に入れた本。 その当時の私の関心は主に非平衡系の話だった。 もちろん greg の関心はもっと広くて深くて (特に初期の仕事はほとんど純粋に onsager に触発されたものなんだと、 訪ねたときに思ったくらい)、最近も彼の書いた onsager と乱流に関する広範な論文 を目にして(中身は読めていないけど)、妙に納得した。

  • 今回の私の関心は、 "electrolyte", onsager と debye の逸話のネタであり、 彼が最晩年に再び戻ってきたネタ (例の hubbard-onsager)であり、 その本でも誰だかが「onsager の初恋」と言っていた、 その subject に興味があったので。しかし(というか案の定というか)、 物理よりも(つまり onsager の論文よりも) commentary に書かれた彼の人物像や 背景の記述の方にばかり目が行ってしまった。 ある評者の文章に「一般に広まっている論文の粗製濫造という悪癖を onsager はその行動によって否定した」、 (つまり論文はあまり書かなかった(細心に吟味して書いていた)という意味) ような記述があった。それでも(しかも全集ではない状態でも)電話帳以上の本になるわけで、 まあ圧倒的に違う世界のお話だけど。